鶉坂
【うずらざか】

高知市朝倉地区南部から鷲尾山脈を越えて，吾川(あがわ)郡春野町弘岡地区へ越える坂。長宗我部地検帳にも記載があり，「土佐州郡志」には幡多郡への往還大路とある。古くから高知市方面から県西部へ向かう主要幹線路の最初の難所であった。高知市朝倉地区横町から南下，海老ケ橋を渡り，鏡岩を経て，大谷付近から坂道を荒倉峠に至り，荒倉神社付近を経て，春野町弘岡中ノ村へ下りる。大谷から荒倉峠までの道筋に東ノ峠・鶉坂の小字名が残存する。江戸期，高知城下町およびその隣接地帯とその外側の圏とを分かつ自然境界に選ばれた。高知城下町の商業保護のための方限の設定にあたってもこの坂が選ばれ，文政２年の御町人並郷浦商人共郷中持売条々の事の中で，御城下公定価格の適用範囲の南西の方限とされた。近代以後も定期バスが通るなど，昭和29年の荒倉隧道開通まで春野町弘岡方面を経由して西方に向かう主な道筋であった。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7606911