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大井川
【おおいがわ】


沖縄本島北部,本部(もとぶ)半島の基部を北流し,今帰仁(なきじん)村越地で東シナ海に注ぐ河川。方言ではウフンヂャー・プンヂャーガーラ・ウフンガー・フンガーという。河川延長10.8km・流域面積22.9km(^2)で,本部半島中で,最大。下流から8.5kmは2級河川の指定を受けている。河川名は大川の意味をもつ普通名詞が転訛したものと思われる(今帰仁村史)。本部半島の最高峰八重岳に源を発し,本部町の伊豆味(いずみ),今帰仁村の呉我山・天底(あめそこ)・玉城(たましろ)の各字を経て,仲宗根で海に注ぐ。上流部で恩納(おんな)川(恩名川)・村川・古嘉津宇(ふるかつう)川・下の川・涸川・農会(のうかい)川などを支流にもち,本部半島北東部を流域としている。上・中流域は古生代二畳系の本部層や中生代三畳系の今帰仁層などの石灰岩や変成岩類の地質から山地・丘陵をなし,河道はしばしば渓谷状を呈し,わずかに伊豆味・呉我山・マッチャクに狭小な氾濫原が発達する。また石灰岩域が広いためカルスト河川の性格をもち,河川水は割れ目などを通って地下河道で伏流するため,本流は雨後を除けば普段はかれ川である。サンタキ(山岳)の集落付近から下流部となり,河道は渓流から沖積河川へと変化する。下流一帯に潮の溯上が認められ,河口部は低潮時に泥質の干潟(マングローブ湿地)が出現する典型的なエスチュアリ(海水が内陸まで侵入する河口域)となる。上・中流域の山地・丘陵部は県内有数のパイナップル産地であるが,これは昭和34年から伊豆味一帯で県内の先駆をなして栽培し普及したもので,それ以前は大半が沖縄在来型温暖帯林の山林で占められていた。下流部の仲宗根のうち大井川町一帯の沖積低地は同38年以降に水田からサトウキビ畑に変わった。仲宗根の大井川橋下流約200mに位置するハミグムイは,山原(やんばる)船の船だまりとして第2次大戦中まで利用され,さらに河口部は「由来記」にあるテイミナト(炬港(たいみなと))があり台風時の避難港となっていたが,今日では土砂が埋積し,港の機能はなくなった。近年その右岸側が埋立てられ養鰻場などが建設されている。流出量は1日平均8万3,600m(^3)(昭和39~45年)と少なく,安定的な水利用も難しいため,水利施設はほとんどない。下流部を中心に護岸などの改修工事も近年進められているが,これまで台風時に仲宗根や呉我山周辺で洪水災害の記録が残っている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7608345