燃えつき症候群
完全主義,理想主義,強迫傾向の人が,教師,看護婦,精神療法家などの職業に就いたときに,心身ともに疲労してうつ状態になってしまった状態のこと.自分が職業について理想として思い描いていた状態が,実際には実現困難なものであることを知るにつれて,報われなさに押し潰されていく.教育やカウンセリングなど人間の精神にかかわる分野では,客観的な評価が曖昧である.自分で自分を評価することになるが,その場合,完全主義の人は自分によい評価を与えることができず,まだ足りないと思うようになる.精神的活力を使い果たしてうつ状態に陥る.教育や心理の仕事は相手が人間なのだから,自分が努力すればそれに比例して成績が上がるという性質のものではない.したがって完全主義者が本来感じやすい不全感や報われなさが生じやすい分野である.完全主義傾向のある人は,仕事の性質からいって,自分の完全癖を満足させることはむずかしいのだと最初から頭に入れておく必要がある.教育効果や治療効果を完全にしようと思わずに,自分の記録を完全にするとか,勤務時間を完全にするとか,そのあたりで完全欲を満たすようにしたらどうだろうか.
| 丸善 「こころの辞典」 JLogosID : 12020517 |