キリスト教
【きりすときょう】
宗派によって微妙に違う、キリスト教徒の十字切り
キリスト教徒と切っても切れない関係にあるものといえば、十字架と十字を切る祈りの形態だろう。しかし、キリスト教徒はみな十字を切って祈るものだというのは間違いである。キリスト教徒のなかでも、プロテスタントは十字を切らないのが一般的だ。では、プロテスタント以外の宗派は、みな一様に十字を切るのかというと、これも正しくはない。十字を切るという仕草は、まず右手を頭から胸まで縦に移動させ、その後、左右の肩のラインで横に移動させる。いわゆる十字の形に添って、右手を動かすわけだが、その際、右肩が先か左肩が先かによって宗派が分かれる。右肩を先にするやり方ならロシア正教式。反対に、左肩が先ならカトリック式である。十字を切る意味は、頭から胸の縦のラインが、イエスが天界から下界へ降りてきたことを示し、左右の横のラインは、神の愛によって、罪を意味する左側から、善を意味する右側へと導かれることを意味する。ロシア正教もカトリックもこの意味に変わりはない。ただ、右と左の順番が逆になるのは、イエスに対して、同じ側に立つのか、向かい合っているのかといった解釈の違いにより変わるだけだ。そのため、ロシア正教でも、司祭以上の聖職者が信者を祝福するときには、十字の切り方が、上から下、左から右へとなる。また、十字を切るのは右手だが、右手の使い方も微妙に違う。カトリック式では、五本の指全体を使う。五本の指は、キリストの五カ所の傷をあらわすという考え方からだ。一方、ロシア正教では、使うのは親指と人さし指、中指の三本だけ。残る二本の指は、内側に折り曲げておく。三本の指は、イエスとその父である神、そして聖霊をあらわしており、彼らは三位一体であるという思想からきているといわれている。
| 東京書籍 「雑学大全2」 JLogosID : 14820237 |