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時雨
【しぐれ】


「時雨」はもともと雨ではなく、「風」をさす言葉!?

時雨」といえば、秋から冬にかけて断続的降る通り雨のことである。俳句でも初冬季語になっており、夕時雨小夜時雨時雨傘などがよく使われる。与謝蕪村俳句にも「楠くすの根を静かにぬらすしぐれかな」とあるように、普通時雨は雨のこととして使われ、気象庁の『予報作業指針予報用語』でも、時雨は「大陸からの寒気日本海東シナ海海面で暖められて発生した対流雲が次々通るために晴れ曇り繰り返し断続的に雨や雪の降る状態通り雨として用いられる場合もある」と説明している。ところが、その語源をたどってみると、雨ではなく風であるという説があるのだ。元気象庁の根本順吉氏の説によると、万葉仮名には「四具礼」、「鐘礼」、「爲暮」などがあり、現在の時雨」が用いられていることはなく、「爲暮」について貝原益軒は「しばし暮れる」を語源にしているということで、雨とは関係のない語源であるという。幸田露伴も、「しぐれ」のしを「あらし」のし、「つむじ」のし、あなじ(「あな」は驚き、「じ」は風の意)、しなとべ(風神名前)などと同じ、風の古語ではないかとした。また、「しぐれ」の「ぐれ」は「風狂い」から来ているのだと考えたという。確かに時雨初冬前線通過にともなう天候乱れる様子をいうので、本来は雨を含むか含まないかは関係がないはずである。その証拠に、昔は「しぐれ雨」という言い方があったくらいだ。これに対して「しぐれ風」という言葉はどこにもないから、しぐれという言葉自体は「風」をあらわしていた可能性高い。なお、このことは幸田露伴の『音幻論』に書かれている




東京書籍
「雑学大全2」
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