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EU緊急対応部隊


 EU独自の危機管理部隊。ユーゴ紛争など、冷戦後の地域紛争対応するための軍隊は、1990年代の早い時期から議論されていたが、コソボ紛争を契機とする共通防衛政策の急速な発展にともなって具体化した。99年12月のヘルシンキ欧州理事会は、危機発生から60日以内の軍事展開が可能な6万人規模の緊急対応部隊と共通警察部隊の創設を決定した(ヘッドラインゴール、当初稼働予定は2003年だったが、現在の予定は2010年)。この過程で、政治・安全保障委員会、軍事委員会、軍事幕僚部などが暫定的に発足した。03年には、ボスニアでの文民警察協力(EUPM)、マケドニアでの軍事作戦(「コンコルディア」)、コンゴ北東部での平和維持活動(「アルテミス」)などのEU主導の緊急展開部隊の派遣が初めて行われた。アルテミスフランスが中心となって命令指揮をとった。04年8月にはドイツフランスなどの欧州合同軍が、10月に予定された大統領選挙に備えて、アフガニスタンの国際治安支援部隊(ISAF)の指揮権NATOから継承した。合同軍が欧州以外で活動したのは初めてだった。同年12月にはEU加盟国の部隊がボスニア・ヘルツェゴビナでの統治活動をNATOから引き継いだ。同年9月には紛争後の不安定な地域に派遣する「欧州憲兵隊」の創設にフランススペインイタリアポルトガルオランダの5カ国が合意した。しかし、EU加盟国すべての歩調が一致している訳ではなく、またスイスオーストリアなどの中立国は、緊急対応部隊の機能が「危機管理」を超えて「共同防衛」にまで拡大することを強く懸念している。また、米国はEU独自の軍事的発展を公には歓迎しているが、欧州の米国離れを強く警戒している。




朝日新聞社
「知恵蔵2009」
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