宿世
【すく-せ】

[名]
▲仏教語。「しゅくせ」の音が転じたもの。「宿」には、古くから、の意がある。人間界における出来事は前世の業(ごう)によって決定されるという仏教の考えから前世、および前世からの因縁(いんねん)の意を表す。宿世の思想は平安時代の文学に強い影響を与えている。
[1]前世。過去の世。
[例]「たへがたくとも、わがすくせのおこたりにこそあめれなど」〈蜻蛉・上〉
[訳]「我慢しかねても、自分の前世での行いのつたなさというものだろうなどと」
[2]宿命。運命。前世からの因縁。
[例]「いと心憂く、すくせのほどおぼし知られて、いみじとおぼしたり」〈源氏・賢木〉
[訳]「ひどく嫌な気がし、前世からの因縁のありようもお心に浮かび、やりきれないとお思いになった」
[例]「これも前(さき)の世に、この国に跡を垂(た)るべきすくせこそありけめ」〈更級〉
[訳]「これも前世で、この国に住むはずの宿命があったのであろう」

![]() | 東京書籍 「全訳古語辞典」 JLogosID : 5086434 |