夕(ゆふ)されば 野にも山にも 立つ煙(けぶり) なげきよりこそ 燃えまさりけれ
【ゆふさればのにもやまにも】
〔〔和歌〕〕〈大鏡・時平〉
[訳]「夕方になると野にも山にも立ちのぼる煙は、私の嘆きという投げ木を加えるので、ますます燃えさかることだ」
<参考>菅原道真(すがわらのみちざね)が大宰府(ださいふ)の謫所(たくしょ)で詠んだ歌の一つ。もの悲しく心細い思いのする夕方に、遠くあちこちで立つ煙を見て詠んだもの。「投げ木」はたきぎにする雑木(ぞうぼく)で、無実の罪で配流(はいる)された「嘆き」をかける。
 | 東京書籍 「全訳古語辞典」 JLogosID : 5091579 |