そむ・く
【そむ・く】

<一>[自][カ四]<二>[他][カ下二]<一>か/き/く/く/け/け<二>け/け/く/くる/くれ/けよ
《向き》背を向ける。後ろ向きになる。→<一>[自][1]
背を向かせる。遠ざける。→<二>[他][1]
《背反》背反する。逆らう。→<一>[自][2]
離反する。→<二>[他][2]
《出家》出家をする。世を捨てる。→<一>[自][3]
▲「背(そ)向(む)く」がもともとの意。上代・中古では「…をそむく」が多く見られるが、中世以後は「…にそむく」の形で用いられることが多くなる。
<一>
[1]背を向ける。後ろ向きになる。
[対]面向(おもむ)く
[例]「涙の落つれば、恥づかしとおぼして、さすがにそむき給へる」〈源氏・賢木〉
[訳]「涙が落ちたのを、きまりが悪いとお思いになって、なんといってもやはり背をお向けになっていらっしゃる」
[2]背反する。逆らう。離れる。
[対]面向(おもむ)く
[例]「国王の仰せ事をそむかば、はや殺し給ひてよかし」〈竹取・帝の求婚〉
[訳]「国王(=帝(みかど))のご命令にもし逆らったのならば、早く(私を)お殺しください」
[3]出家をする。世を捨てる。
[対]面向(おもむ)く
[例]「五十(いそぢ)の春を迎へて、家を出(い)でて世をそむけり」〈方丈〉
[訳]「五十歳の春になったときに、家を出て世を捨てたのだ」
<二>
[1]背を向かせる。遠ざける。
[対]面向(おもむ)く
[例]「灯ほのかに壁にそむけ」〈源氏・帚木〉
[訳]「灯火をほの暗くして、壁の方に背を向かせて置き」
[2]離反する。
[対]面向(おもむ)く
[例]「督(かみ)は、日にそへて人にもそむけられゆくに」〈増鏡・新島守〉
[訳]「督(=源頼家(よりいえ))は、日がたつにつれて人にも離反されてゆくうえに」

![]() | 東京書籍 「全訳古語辞典」 JLogosID : 5107909 |