す・む
【す・む】

[自][マ四]ま/み/む/む/め/め
[1](水などの濁りがなくなって)透き通る。
[対]濁(にご)る
[例]「水の面(おもて)もさやかにすみたるを」〈源氏・椎本〉
[訳]「水の表面も清らかに透き通っているので」
[2](月などの)曇りがなくなる。清らかに明るく輝く。
[例]「すさまじきものにして見る人もなき月の、寒けくすめる二十日あまりの空こそ、心細きものなれ」〈徒然・一九〉
[訳]「殺風景なものであって見る人もいない(冬の)月が、寒々しく清らかに明るく輝いている二十日過ぎの空は、(なんとも)心細いものである」
[3](音や声などが)さえる。響きわたる。
[対]濁(にご)る
[例]「琴笛の音も、明らかにすめる心地はし侍れど」〈源氏・若菜・下〉
[訳]「琴や笛の音も、はっきりと響きわたっている感じはしますが」
[4](邪念・俗念などが消えて)心に迷いがなくなる。心がしずまる。
[対]濁(にご)る
[例]「入道は心すみはつまじくあくがれ眺めゐたり」〈源氏・松風〉
[訳]「明石(あかし)の入道は、(仏道一筋の生活を)心の迷いなく続けていけそうもなく、ぼう然と(明石の君の船を)眺めていた」
[5](人柄・筆跡などが)落ち着いている。あか抜けている。上品である。
[例]「筆のおきてすまぬ心地して」〈源氏・梅枝〉
[訳]「筆づかいがあか抜けていない感じがして」
[6]人の気配がなくなる。静かになる。ひっそりとする。
[例]「人すみて後、三人ながら車よりおりぬれば」〈今昔・二八・二〉
[訳]「人の気配がなくなってから、三人とも車からおりたので」
[7]清音で発音する。
[対]濁(にご)る
[例]「行法(ぎゃうぼふ)も、法の字をすみて言ふ、わろし。濁りて言ふ」〈徒然・一六〇〉
[訳]「行法(という言葉)も、法の字を(「ほふ」と)清音で発音して言うのは、よくない。(「ぼふ」と)濁音で言う」

![]() | 東京書籍 「全訳古語辞典」 JLogosID : 5108318 |