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遠野盆地
【とおのぼんち】


北上山地の中南部に位置する盆地。北上山地中では最も規模が大きく,盆地全域が遠野市。周囲は北に早池峰(はやちね)山(1,914m),東に六角牛(ろつこうし)山(1,294m),西に石上山(1,038m)の遠野三山と南に物見山(917m)など北上山地を形成する山稜に囲まれている。これらの山々から流れ出る大小河川のうち,猿ケ石川は早池峰山の薬師岳(1,645m)の南面に源を発し南流しながら小烏瀬川・早瀬川・来内(らいない)川などを合わせ盆地中央部で西に流れを変え,花巻市で北上川に注ぐ。これら諸河川の堆積地に遠野市街地をはじめ各集落が形成されている。盆地底は標高250~300mの寒冷地で,たびたび冷害に悩まされたが馬産地として有名であった。一方,当盆地は内陸と沿岸を結ぶ交通の要衝で,東は仙人峠(887m)・笛吹峠(862m)を越え釜石市・陸中海岸へ,西は猿ケ石川沿いに和賀郡東和町・花巻市へ,北は立丸峠(775m)を越え下閉伊(しもへい)郡・宮古市へ,南は赤羽根峠(542m)を越え気仙郡に通じるなど,明治に至るまで物資の集散地として栄え,中でも遠野の馬市は有名であった。現在は馬に代わって肉牛・豚などの畜産と酪農,木材加工業などが盛んで,弱電・縫製工場なども進出している。また,大自然の懐に抱かれた遠野の里は民話の宝庫としても知られ,民俗学者柳田国男の「遠野物語」は当盆地で採集したものである。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7015440