100辞書・辞典一括検索

JLogos

15

払田柵遺跡
【ほったのさくいせき】


平安期の官衙跡。雄物(おもの)川の中流域に近い大曲(おおまがり)市の東方約6km,仙北平野のほぼ中央部で,真山(しんざん)・長森の残丘を中心に,北側に矢島川・烏川,南側に鞠子(まりこ)川に囲まれた沖積地にある。遺跡名は昭和5年上田三平氏によって命名されたもので「払田は遺跡所在の地名,柵跡は遺跡の構成材料と形態とによって推定した」と記録があり,史跡指定名称は「払田柵跡」となっている。払田は真山が天文年間の堀田氏の居城であり,堀田が払田に転化したものと思われる。秋田県教育委員会は昭和49年度から現地に「払田柵跡調査事務所」を設置して通年調査を継続実施している。遺跡の概要は次のとおりである。①遺跡は長森を中心とする内郭と2丘陵を取り囲む外郭からなり,範囲は東西1370m・南北780mの長楕円形である。②長森中央部には板塀に囲まれた掘立柱建物(正殿・東西脇殿)があり,6回建立している。③内郭線は角材列と築地土塀が連結する建造物であり,これらの構造物は湿地と丘陵地という基礎地盤の相違によるものと考えられる。④内郭線と内郭北門跡・内郭南門跡は2時期の重複である。⑤外郭線の角材列と外郭南門跡は1時期である。⑥政庁域内の建物配置形式と造営技術は律令制官衙様式に基づいている。⑦主要な出土遺物は,土師器・須恵器のほか,「嘉祥二年正月十日」と紀年銘のある木簡,緑釉陶片,平瓦,塼,砥石などがある。報告書は,上田三平「指定史蹟拂田柵阯」(昭和6年),上田三平「史蹟精査報告第3 拂田柵阯」(昭和13年),秋田県教育委員会払田柵跡調査事務所「払田柵跡調査事務所年報1974~78」(昭和49~54年)。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7022858