白根山
【しらねさん】

利根郡片品村と栃木県日光市との県境にある山。標高2,578m。那須火山帯に属し,日光火山群の主峰で,関東以北の最高峰でもある。甲斐白根山(3,192m),草津白根(2,176m)と区別して,日光白根山ともいい,また前白根山(2,373m)に対して,奥白根山ともいう。山名は,白い雪をかぶった山の意に由来する。火山活動としては,寛永2年・慶安2年・明治5~6年・同22年・昭和27年などの噴火が記録されている。山体は第三紀の鬼怒川流紋岩などを基盤とし,その上に第四紀初期からの活動による橄欖石,角閃石,紫蘇輝石,普通輝石を含む石英安山岩,凝灰角礫岩および火山砕屑物がのる。構造は二重式火山で,東側の五色山,前白根山を通って,さらに南西に延びる山稜は外輪山と考えられ,中央火口丘の奥白根山との間には,火口原湖の五色沼がある。山頂の西側には,西方に開いて火口瀬となる爆裂火口があり,火口周辺は溶岩壁が絶壁をなし壮観である。火口瀬は仁加又沢となり,西流して片品川へ合流する。奥白根山の北西麓に並ぶ菅沼・丸沼・大尻沼はこの火山の噴出による堰止湖である。標高2,400mより山頂までは高山帯であるが,新しい火山のためハイマツは見られず,ミヤマハンノキの低木林となっている。山頂より北斜面を300m下った地点に,オオシラビソに囲まれ,ひっそりとしたたたずまいを見せる弥陀ケ池がある。この辺りはシラネアオイの多産地で6月下旬には淡紫の美しい花が咲き乱れる。白根山には原産植物も多く,シラネアザミ・シラネアオイ・シラネニンジン・シラネセンキュウ・シラネザサ・シラネチドリ・ニッコウキスゲなど白根や日光の名をもつ植物が自生する。登山コースは湯元からと菅沼からとの2つに大別できるが,最短コースのものは菅沼から弥陀ケ池を経由して奥白根へ到達するコースである。山頂からは尾瀬や奥利根の山々,男体山や戦場ケ原など360°の眺望が開け,ここには白根権現を祀る奥白根神社がある。日光国立公園に属する。

![]() | KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7045823 |