高野郷
【たかののごう】

旧国名:越中

(古代)平安朝に見える郷名。婦負(ねい)郡のうち。「和名抄」に見える婦負郡10郷の１つ。刊本に「多加乃」の訓を付す。「三州地理志稿」は近世の田中郷内の高尾村を「三州志」は同じく山田郷内の上野(うわの)村を遺称地かとする。前者は室牧(むろまき)川に沿う旧室牧村内の１村で，現在婦負郡八尾(やつお)町に属し，後者は山田川に沿い，旧音川村を経て現在婦負郡婦中町に属するが，両説とも確かな根拠に基づくものではない。これに対し，「越中志徴」は，中世～近世に新川(にいかわ)郡の郷名として見える高野郷に注目し「婦負，新川の郡界，いにしえと今と大いに違えり」として，これを古代の婦負郡高野郷の後としている。しかし，郡界の多少の移動を考慮しても，中・近世の高野郷は常願寺川の右岸扇状地の地域に当たり，ここまで婦負郡に含めることはいかがかと思われる。また「日本地理志料」は，近世の楡原(にれはら)郷の一部，室牧川上流の大長谷川に沿う，旧大長谷村内高野村（現在八尾町のうち）を遺称地とするが，これは「婦負郡誌」に「内名(うちのみよう)村の支村にして高地の原野を開拓して創設せるにより斯く名づけたるなりという」とあるように，果たして古代の郷名を伝えるものかどうかは疑わしい。「地名辞書」は未詳としたうえで，１つの憶測として，井田川の西，山田川に沿った現婦中町の長沢あたりに比定する考えを示している。いまのところ確かな所在地は不明とするほかない。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7082504