南アルプス
【みなみあるぷす】

赤石山脈ともいう。長野県・静岡県・本県の3県にまたがり,古生層から中生層の山地で,北は長野県諏訪湖の南守屋山(1,650m),南は静岡県の高塚山辺りまでの約75km,東西約25kmの間の,甲斐駒ケ岳山系・鳳凰山系・白根山系・赤石山系・伊那山系の総称。木曽山脈(中央アルプス)・飛騨山脈(北アルプス)とともに中部日本の脊梁をなす大地塊山脈。北から東は糸魚川静岡構造線に,西は中部・近畿・瀬戸内・九州の各地を連ねる中央構造線で限られ,この間に3,000m以上の高峰12座(2,500m級が56座)を有する広大な山岳群で,北部の甲斐駒ケ岳(2,965.6m)と鳳凰三山と呼ばれる地蔵ケ岳(2,740m)・観音岳(2,840m)・薬師ケ岳(2,762m)は花崗岩からなり山岳宗教のメッカであった。中央部の白根山系にはわが国第2の高峰白根北岳(3,192.4m),第4の高峰間ノ岳(3,189.3m)があり,北の仙丈ケ岳(3,032.7m)は高山植物や高山チョウの宝庫。南の赤石山系の主峰赤石岳(3,120m)は,最初の測量時,最高点とされたことから赤石山脈の名が起こったという。これら山地には多くの縦谷が発達し,早川(本県)・安倍川・大井川・天竜川(静岡県,本流は長野県諏訪湖)の源となり,氷河遺跡も17を数えることができる。2,000mmを超す降水量と有効落差が大きいため電源開発地域であるとともに森林資源の宝庫で,天然林も多く残る。昭和39年6月,南アルプス国立公園の指定を受けた。観光開発が進む本県側の白鳳渓谷は電源開発道路と野呂川林道の全通で,広河原が基地となり,年間約50万人以上のハイカーなどでにぎわい,広河原から北沢峠(2,036m)までは,昭和27年着工の野呂川林道の改修延長の南アルプス林道として芦安村営バスが夏期のみ運行し,長野県長谷村営バスと連絡している。ブナ・モミ・ツガなどの亜高山の樹木,ウサギ・キツネ・タヌキなどの動物類も多く,ライチョウは国天然記念物。白鳳渓谷から甲府盆地一帯の南アルプス前衛の山地は北巨摩(きたこま)郡白州(はくしゆう)町の日向山(1,659.6m)から南にのびて中巨摩郡中富町の富士見山(1,639.5m)の1市(韮崎(にらさき)市)7町2か村にまたがる1万4,841haは,昭和41年4月,県立南アルプス巨摩自然公園に指定された。

![]() | KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7098497 |





