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岳南排水路
【がくなんはいすいろ】


富士・富士宮両市を中心とした岳南工業地域には,170余の用水型の紙パルプ工場をはじめ,多くの工場が立地しており,それらから排出される大量の工場排水を流すために造られた特別都市下水道を岳南排水路という。総延長32km,総工費40億円であった。排水路建設以前,工場排水は農業用水路や河川に放流されており,古くから汚水問題が生じていた。第2次大戦後の復興と生産増に伴い,昭和25年頃から,工場排水が河川の水質を著しく汚濁し,下流域の農民や,小潤井川から生活用水をとっていた吉原地区住民に悪影響を与え,企業と農民・住民間の紛争が社会問題化するようになった。このため,県は岳南排水路建設に着手した。初めは,農産物に対する被害を除去するため,上流から施行されたが,産業構造の高度化に伴い,下流域の整備が必要となり5つに系統化されるとともに終末処理場の建設が問題となった。当初計画は,富士宮市や富士市鷹岡地区の潤井川沿いに分布する約50工場の排水を一部農業用水路を利用した排水路で,鷹岡地区の滝戸まで導水し潤井川に放水することとし,都市水利施設整備事業(岳南排水路)として昭和26年から5年間を要して実施された。昭和32年特別都市水利事業として,滝戸までの排水路を潤井川へ放流せず下流部へ延長する岳南排水路と,吉原市街地内の工場排水を集める和田川排水路を合流させ,田島地区にポンプ場を設け沼川に放流する計画であり,汚水処理場をポンプ場の南(現在の日食工場付近)に予定された。処理場建設は,製紙カス焼却による大気汚染悪化と工場汚水は発生源である各企業で処理すべき問題であるという地域住民の反対にあい建設に至らなかった。昭和40年代は浮遊物質300~400ppmという汚水が200万m(^3)も毎日田子の浦港に流入し,港をヘドロの沈殿地とし,駿河(するが)湾を汚染していた。一時は,田子の浦港を迂回し,防潮堤の下をくり抜き,直接海水中に汚水を放流し,その処理を海水の浄化作用に依存しようとする海中拡散放流計画もあったが,汚水をそのまま海へ流し込むということは,反自然的暴挙であるという由比などの駿河湾岸漁民の反対にあい中止となった。この動きが,岳南排水路への各工場の汚水排出基準制定(汚染源である工場での汚水処理)の契機となった。現在,136万m(^3)の処理排水が毎日140余の工場から岳南排水路に排水され,田子の浦港吉原埠頭西で放流されている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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