西野放水路
【にしのほうすいろ】

1級河川。伊香(いか)郡高月町西柳野(にしやなぎの)地先で余呉(よご)川から分流,直線状に西に流れ,礒野(いその)山(297m)の南の尾根を貫通するトンネルで琵琶(びわ)湖に流入。全長1,075m,内放水トンネル部分245m。近江の青の洞門といわれる(伊香郡志)。高月町の西端に位置する西野は北と西を山に囲まれ,南東に余呉川が流れる低平な地勢にあり,古来,余呉川が氾濫するたびに全域水没する洪水常襲地帯であった。天保11年,西野充満寺の住職西野恵荘らは排水路の建設を計画,能登・伊勢の石工を招き6年におよぶ難工事の末,弘化2年,全長250m,高さ1.5m・幅1.2mの隧道を開削し,余呉川の水を琵琶湖へ放水することに成功した。以来1世紀にわたり西野をはじめ余呉川下流域の洪水防止に大きな役割を果たしてきたが,施設の老朽化と大洪水時の排水不良を解決するため,昭和21年,新しい放水路の建設が計画され昭和25年,旧隧道のすぐ横に捷水路830m・高さ4m・幅4mの放水トンネル245mの新放水路が完成。大洪水時には旧隧道も併用されている。放水トンネル入口には西野恵荘らの業績を讃える石碑がたてられている。なお,新旧両隧道の併用は,旧水道の老朽化が著しく抜本的に洪水解消を図るため,昭和52年6月,延長286m,高さ・幅ともに10.3m,放水能力毎秒350t,取付け水路100mの新放水路の建設が,昭和55年の完成をめざし現放水路の南隣りに進められている。

![]() | KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7134285 |





