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猪甘津
【いかいつ】


御勝山古墳(生野区勝山北1~5丁目)の北側付近にあったとされる古代の港。上町台地東辺部のボーリング資料から,現在の平野川と国鉄大阪環状線との間に幅約450mに及ぶ旧平野川の開析谷の存在が明らかにされている。この開析谷は大阪城公園東側の城東区森之宮1~2丁目付近から現平野川筋に沿って南下し,東区玉造1~2丁目を経て生野区桃谷1~5丁目付近に及ぶ。これは,明治19年の内務省大阪実測図の小字名からも読みとれるが,かつてこの開析谷には,依羅池や長居池を水源とする猫間川や平野川が集まり,上町台地東側の江湾を形成していた。当津は,この江湾の奥に開かれた港であり,上町台地により西風をさえぎられ,波もなく,港としては上町台地西縁の御津や住吉津よりも自然に恵まれた良港であったといえる。現在の御勝山古墳北側あたりは,陸地測量部の大正10年の1万分の1地形図によれば,大字猪飼野となっている。「日本書紀」仁徳天皇14年冬11月の条に,「猪甘津に為橋(はしわた)す。即ち其の処を号(なづ)けて小橋と曰ふ」とあり,また「小野家集」に,「忍ふれと人はそれそも御津の浦に渡り初にしゐかひつの橋」とある。この御津の浦とは玉造江のことをいい,さらに玉造江については,「新勅撰集」に「みとと入玉造江に漕船の音こそたてね君を恋れど」とある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7147398