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千本松の渡し
【せんぼんまつのわたし】


十番の渡しともいった。木津川河口に近い渡し。大阪市西成(にしなり)区南津守2丁目と大正区南恩加島1丁目を結ぶ。全長210m。市道千本松渡線の指定を受ける。近世から木津川左岸の津守新田と右岸の平尾新田を結ぶ渡しとして運航され,船舶航行の必要から架橋されない木津川の特性によって明治期以降に引き継がれて現在に及ぶ。天保3年,木津川河口に沿って870間余の防波堤を築いてこれを石波塘(いしはと)といい,松を植えて避波松または千本松と呼んだことにちなむ。舟遊びや汐干狩の景勝地としても知られた(摂津名所図会大成)。十番の渡しの名は防波堤基部の津守新田付近のことを十番といったことによる。現在は大阪市営で,昭和46年ごろまで1日平均9,000人が利用したが,昭和48年に渡しの位置に,長さ323.5m・幅9.8mの千本松大橋が開通して減少した。しかし,この橋は船舶航行の便から水面上36mの高さがあり,登り口が三重螺旋形をなして延長1,245mに及び,徒歩で15分もかかるため,渡船は廃止されていない。橋が架かると渡しを廃止するという定型パターンが通用しない例といえる。昭和54年現在,1時間に3回運航で,1日平均1,200人が利用する。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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