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多々良木ダム
【たたらぎだむ】


朝来郡朝来町多々良木にある循環式純揚水発電の下部調整ダム(標高228m)。上部ダム・下部ダムからなる。円山川の支流多々良木川の中流に造られ,瀬戸内海へ南流する市川の上流にある上部調整池の黒川ダム(同郡生野町黒川)と,中国山地の分水界を利用して地下水路(延長3,700m)で結び,有効落差383.4mを得ている。地下100mの地点に,30.3万kwの発電機を4台備え,最大121.2万kwの発電能力を有する関西電力奥多々良木発電所の下部ダムである。昭和46年4月着工し,総工費470億円をかけ,1・2号発電機は同49年6月,3・4号機は同50年6月に運転開始された。この間,多々良木ダムの湖底に24戸が水没,移転を余儀なくされた。ダム本体は岩石を積み上げ,表面をコンクリートで仕上げた表面アスファルト遮水壁型ロックフィルダムで,堤高64.5m,堤頂長278.0m,堤頂幅10.0m,底部幅238.0m。ダムサイトを構成する岩盤は良質堅硬な石英粗面岩質凝灰岩からなっており,河床部左岸寄りに破砕帯があるが,ダム建築上,特に問題にならなかった。流域面積は上部ダム5.2km(^2),下部ダム13.4km(^2)と合わせても,わずか18.6km(^2)であるが,中国山地内のため地形性降雨に恵まれ,5か年平均(昭和54~58年)で,黒川1,575mm,多々良木1,536mmと比較的多い。総貯水量は黒川ダム3,339万m(^3),多々良木ダム1,944万m(^3)。有効貯水量は黒川ダム2,136万m(^3),多々良木ダム1,738万m(^3)。発電方式は,電力の最も多く使われる10~17時に発電し,深夜・休日の余剰電力を利用して可逆式ポンプ水車を回し,上部ダムへ揚水する。したがって,揚水電力に対し発電力は70%にとどまる。しかし,北摂発電所と50万Vの送電線で結ばれ,若狭湾岸の高浜・大飯・美浜の原子力発電所群や瀬戸内海側の火力発電所群とセットされ,原子力発電・火力発電のフル操業を可能にする重要な役割を果たしている。多々良木川は古く,そうけ川と呼ばれ,河水はほとんど地下に浸透し,土地利用も畑作が卓越する谷であった。近年,湖周辺に,緑ケ丘キャンプ場・観光農園・朝来町歴史民俗資料館が開設され,観光開発が進められている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7160464