紀ノ松島
【きのまつしま】

東牟婁(ひがしむろ)郡那智勝浦町,勝浦港外に散在する大小さまざまの島の総称。その風景は宮城県の松島に似ているので大正末期に勝浦保勝会が紀ノ松島と名づけた。この諸島は第三紀の真岩と砂岩の互層からなり,山地の沈降で山頂が海面上に残ったものが熊野灘特有の荒波に浸食されてできたものである。狼煙山半島の80mの褐色の海食崖や,「平家物語」に記された平維盛が入水したと伝えられる歴史的にも由緒ある山成島など大小合わせて100を数える小島や岩礁,数多くの洞穴などが紀ノ松島の景勝を構成している。わずか周囲17kmの規模であるが,そこに散在する島々は形によって,ラクダ島・カブト島・千畳敷などと名前がつけられている。これらの島は,海釣りの名所でもある。海上からは北西に標高750mの妙法山の阿弥陀寺の卍の標識がみえる。その右手に一条の布を垂らしたような那智の滝が望見される。海岸からは勝浦湾・那智湾・森浦湾などを望める紀南の名勝地である。紀ノ松島巡りの観光船は勝浦港の観光桟橋から出ており一周50分である。この観光船は第2次大戦後旅館の渡し船から出発したものであるが,現在年間30万人の乗客がある。

![]() | KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7171294 |





