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羽合温泉
【はわいおんせん】


東伯(とうはく)郡羽合町にある温泉。古くは浅津(あそづ)温泉(おそうづ温泉ともいう)と呼んでいたが,昭和53年6月羽合町創立25周年を記念して改名した。当温泉の起源は,天保14年の秋,浅津・松崎両村民が東郷池の中心部で自然湧出している温泉を発見し,藩主へ湖心の源泉利用法を願い出たのが始まりといわれている。慶応2年湯村幸助は東郷池中央部より自然湧出する温泉を孟宗竹を突っ込んで集湯し,湖上に舟を浮かべて,4斗だるに湯を溜め,即席の浴場をつくり湖上で温泉気分を味わったという。当時浅津村には漁師が多く,舟は比較的利用しやすく,漁の疲れをいやしたりしたのであろう(湯村貞蔵氏による)。しかし,湖上入湯は,湖面が上下したり,碇泊していた舟が風浪によって流されるなど不便なためにこの「青空湯場」は明治13年頃姿を消してしまった。石州の士族出身といわれる幸助は,本気で温泉の開発に取り組むこととなった。同19年付近一帯を埋め立て,上浅津湖岸で掘削を行い,現在の地で採湯に成功し,温泉旅館を創業することになった(同前)。同43年上浅津で自然湧出を見つけ,大正初期から温泉の開発が盛んとなった。東郷池の北西岸にあり,湖畔および湖底から湧出する温泉群で,湖上に浮かぶ水郷温泉地として知られている。国鉄山陰本線松崎駅を下車し駅前の乗船場から連絡船に乗り,約10分。また,倉吉駅からバスで約15分。モータリゼーション時代に入ってからは国道9号に近いことが利点となり,多数の団体客を乗せたバスが横づけするようになった。泉質は含石膏食塩泉で東郷温泉と同質。温泉数30,うち枯渇源泉数21・利用動力源泉数9で,平均泉温55.8℃,湧出量合計毎分1,809.9ℓ(昭和45年県温泉総覧)。昭和41年10月浅津温泉管理協同組合を設立し,23源泉を8源泉に整理統合のうえ,旅館16,厚生施設2および個人7に集中配湯し,同44年には旅館で5万3,000人,厚生施設で6,000人の利用者をみている。さらに豊富な温泉を地元住民にも還元すべきとの考えから浅津農業協同組合の運営で1源泉から同地区の組合員253戸の家庭と2か所の共同浴場へ送湯し,各家庭のほとんどが温泉風呂と温かい湯の出る台所をもつという恩恵に浴している(県温泉総覧)。年間観光客数は昭和29年1万1,893人・同30年1万7,274人・同40年7万3,443人・同50年24万3,100人・同55年28万8,200人(県観光課調)と26年前の24倍の観光客が来ており,飛躍的な伸びを続けている。こうして阪神方面を中心とする団体客を迎えるため,湖畔の埋立地に次々と近代的高層ビルの旅館・ホテルがたち並び厚生施設を含め32軒を数え,収容能力1,800名の一大温泉街が形成されている。第2次大戦前はわずか3~4軒の旅館にすぎなかった湯治場が一躍観光温泉地として発展していった。東郷池の湖心に湧く温泉を600mの配湯管で送っており,しかも湯量は豊富で,岸に近い湖底源泉を利用してやぐらをつくり,浴場を湖上に設置している情緒ある旅館もある。三朝(みささ)東郷湖県立公園に属し,近年,東郷湖羽合臨海公園が近くに完成し,中部健康増進センターも開設され,今後の飛躍が期待されている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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