修禅寺
【しゅぜんじ】

豊浦郡豊田町杢路子(むくろじ)字杉谷にある寺。真言宗醍醐派。山号は狗留孫山。本尊は十一面観世音菩薩。別称は御岳観音,通称お岳さん。開基は弘法大師。臨済宗の開祖栄西は建久2年登山し,霊告によって堂宇を建立「狗留孫山国護院観世寺」と命名(寺社由来)。栄西を中興とし,第1世とする。栄西は再度登山して,伊勢大神宮を勧請,鎮守とした。そのためか,今に各伽藍の入口に注連縄が張ってある。本堂右の巨岩は観音岩と称し,各高僧はこの岩頂から発する霊光を感得して登山したという。鎌倉末期の文保元年,当山参拝の難を考慮して長府に祈願所「霊峰山普門院修禅寺」を草創,後醍醐天皇の勅定によって寺堂を建立,勅願所となった。当山に奥の院があって,後醍醐天皇の病気を平癒した霊水が湧いたという巨岩がある。天皇はこのお礼に延元2年に勅願門(仁王門)を建立,本堂を再建した。本堂と奥の院の間に三所権現があり,修験道修行の山でもあった。天正16年毛利輝元は200余貫の地と金2万疋を寄進,翌17年勅願門と本堂を大改修,本堂の後ろに参拝者の便をはかり客殿(通夜堂)を建立,祈願所として深く信仰した。また,堂宇は寛永21年長府藩主毛利秀元が修補,元禄元年も再修補した。寛政3年には末寺13か寺を有した(本末帳集成)。長府祈願所は明治3年本山に統合,当寺を「狗留孫山国護院修禅寺」と改称。今もつづく通夜堂は参詣者の宿泊・休憩所で,一角に重兵衛茶屋がある。門徒は5戸ぐらいであるが,元来,当寺は庶民信仰の寺で,参詣者は県内外から多く特に九州が多い。参道の七曲りは古来より有名。両側には杉の大樹が林立,本堂うしろ南東にある樹齢1,000年の霊木一本杉は周囲10m余もある巨木。260町歩におよぶ境内地は,国名勝と県立自然公園に指定され,標高616mの山頂からの眺望は日本海・瀬戸内海が一望できる。本尊の十一面観音御開扉法会は21年に一度,奥の院の聖観音御開扉法会は毎年10月17日に行われる。

![]() | KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7193121 |