梅谷寺
【ばいこくじ】

阿南市桑野町字鳥居前にある寺。真言宗大覚寺派。駅路山と号す。本尊は阿弥陀如来。江戸期の駅路寺の1つ。文明15年に武田常忠が建立,当初は天神坊と称した。常忠は,桑野城主武田氏の一族であろう。近隣の天神社の別当寺を勤めた(寛保神社帳/続徴古雑抄1)。天神社の由来によると菅原道真が大宰府に向かう途中,梅谷寺の前身となる草庵で一夜を明かしたという(徳島県神社誌)。天文7年武田元信が再興。その後慶長3年に蜂須賀家政より土佐街道の駅路寺に指定され,寺廻10石の寺領と御目見寺院の特権を与えられた。駅路寺とは徳島藩独特の制度で,藩内の主要街道に沿った交通・軍事上の要路にある真言宗寺院8か寺を旅行者の宿舎にあて,旅行者に交通の便宜を図るとともにその動向を監視した。駅路寺に指定されたのは当寺の他に,土佐街道の打越寺(海部郡日和佐(ひわさ)町)・円頓寺(海部郡宍喰(ししくい)町),伊予街道の福生寺(麻植(おえ)郡山川町)・長善寺(三好郡三加茂町)・青色寺(三好郡池田町),川北街道の長谷寺(鳴門市木津)・瑞運寺(板野郡上板町)である。寛政3年の阿波国古義真言宗本末帳によると,那賀郡富岡荘の正福寺(現阿南市富岡町)を本寺としている(江戸幕府寺院本末帳集成)。その後京都大覚寺へ属し現在に至っている。

![]() | KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7196978 |