備讃瀬戸
【びさんせと】

瀬戸内海の,香川・岡山両県の間に広がる海域。東の小豆(しようど)島から,西の塩飽(しわく)諸島にかけて,海域は東西約100kmに及ぶ。南北では,本県の五色台と岡山県児島半島日比の間が最も狭く,約6km,海域の東端と西端では約55kmある。瀬戸内海全体が東西約440kmであるから,備讃瀬戸は全体の4分の1弱に相当する海域である。備讃瀬戸は多くの島嶼を有する瀬戸地形区に属し,島嶼の配列とその規模などに特別な規則性をもたないが,基盤の花崗岩地形に支配されて形成されたもので,陸上部の花崗岩丘陵地の地形と共通する部分がある。東から小豆島・豊島・直島・本島・広島・手島・佐柳島・北木島・白石島・神島などの島々があり,中でも小豆島は面積約153.2km(^2)と最大。当海域は全般に比較的浅く,深度100mを超す部分はただ1か所,小与島南東方(105m)に見出される。東部で東西方向に延びた水深40~50mの中心海域があり,南北の陸地に接近するに従って,次第に浅くなる傾向がある。西部の塩飽諸島では複雑な地形となり,島嶼間に海釜や水道が数多く発達している。海底平坦面は,第1平坦面(水深0~6m),第2平坦面(水深10~20m),第3平坦面(水深30~40m),第4平坦面(水深40~50m)の4面が発達し,第1面は沿岸および島嶼に隣接して発達する砂州の上面にみられる。第2面は豊島・直島・塩飽諸島・大崎鼻・男木島などの島嶼および半島を結び陸地州に広く発達する。第3面は第2面と第4面との漸移面に属し,第4面は男木島・柏島間から大槌島・小槌島間に延び,東西方面に狭長な溝状の地形として発達している。海釜は島嶼間,または半島突出部に多くみられ,特に塩飽諸島に著しい。東部では男木島・女木島周辺,柏島周辺や大槌~小槌島間にも海釜の存在が知られる。波状地形は海底のサンド・ウェーブとして,日比と大槌島の間,女木島西方,大槌島南方,男木島北西の海底に発達することが知られ,全体として,水深10~20m平坦面に存在するものは波長が約50m以内,20~40m平坦面のものは波長50~150m,40~60m平坦面のものは波長150m以上のものが多い。備讃瀬戸海底の地質に関しては,古くから哺乳動物の化石(ナウマンゾウ・シカなど)産出により,これらの化石を含む海底の地層を瀬戸内層群と呼んでいた。しかし瀬戸大橋架橋に伴う海底地質の調査・研究が昭和35年頃から活発に行われ,その成果が飛躍的に増加した。これらの研究結果によると,海底には基盤岩の花崗岩の上に下位から,三豊層群(鮮新世―洪積世,層厚約80m),備讃瀬戸層群(洪積世―沖積世,層厚約175m)に分けられ,後者はさらに大槌島層(洪積世,層厚約50m),槌ノ戸瀬戸層(洪積世,層厚約70m),番の州層(沖積世,層厚約55m)に区分される。これらの地層は,番の州層を除いて,ほとんどが非海成層で,湖沼性または扇状地性の堆積物で構成される。備讃瀬戸海域における海成層は番の州以降の沖積層で構成される。

![]() | KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7199558 |





