多良山系
【たらさんけい】

多良火山地ともいう。県本土のほぼ中央部から佐賀県にまたがる山地。多良山系と呼ぶときには浸食によって形成された主稜線を指すことが多い。多良火山は大村湾と有明海の間に形成された東西約24km・南北34km,面積590km(^2)の山体で遠望すると円錐状の火山にみえ,なだらかなすそ野を引く。基盤の古第三系,玄武岩類の上に更新世初期~中期の豊肥火山活動によって大部分の山体が形作られ,その後の山陰火山活動による溶岩で中央部付近に多数の溶岩円頂丘が形成されたものとされる。多良火山の中央部には,火口状の黒木盆地があり,かつて黒木火口説やカルデラ説が唱えられたこともあったが,現在では構造線に沿う浸食によるものと推定されている。最高峰は経ケ岳(1,075.5m)を中心に,黒木盆地を囲むように鳥甲(とりかぶと)山(769.4m),大花山(875m),五家原岳(1,057.8m),経ケ岳,遠目山(849m),郡岳(826m)の山々が主稜線を形成している。多良火山の名称の起源である多良岳(982.7m)は佐賀県側に位置する。また,周辺には多くの寄生火山があり,烏帽子岳(697m),烽火山(554.3m),武留路(むるろ)山(341.4m)などがある。中腹以下は,無数の放射状谷によって開析されている。それらの河川には昭和60年名水百選に指定された轟渓谷をもつ境川,富川渓谷をもち諫早(いさはや)市街を流れる本明川,下流に大村扇状地を形成する郡川,竜頭泉の渓谷美をもつ千綿川などがある。放射谷の間は緩やかな傾斜の原面を広く残しており,果樹園(柑橘類が主)や放牧地として利用されている。多良山系は,植物相も豊富で,多良岳ツクシシャクナゲ群叢(国,昭和26年),多良岳センダイソウ群落(県,昭和24年),五ケ原岳ツクシシャクナゲ群落(県,昭和32年)が天然記念物に指定されている。多良岳は「肥前国風土記」に託羅(たら)之峰とあり,多良之峰・太良岳などの文字もあてられている。かつては山岳信仰の地として知られ,和銅年間に行基によって太郎岳大権現を創建したと伝えられている。さらに弘法大師によって金泉寺が創建され,真言密教の霊地として繁栄したが,天正2年大村キリシタンの焼打ちにあった。その後寛文3年に再興された。その当時の繁栄をしのぶものとして民謡「岳の新太郎さん(ザンザ節)」がある。現在は,小さな堂が残るのみである。かたわらには県営の金泉寺山小屋がある。山麓の台地面は,沖積低地に乏しい本県にあって,かなり古く開発が行われたところがみられる。北高来(きたたかき)郡小長井町地区にあっては,田原溜池(永禄元年構築)の灌漑によるもの,大野原台地にあっては,野岳湖・四ツ池を灌漑水源とするものがよく知られている。特に野岳湖は鯨組で知られる深沢儀太夫により,寛文3年に完成した灌漑用水である。

![]() | KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7221634 |





