椎葉山地
【しいばさんち】

県北西部,県下最大の面積をもつ東臼杵(ひがしうすき)郡椎葉村(537.3km(^2))を中心に,同郡西郷村・南郷村,西臼杵郡五ケ瀬町および熊本県の清和村・矢部町・泉村・水上村に広がる山地。耳川の上流域に当たる。山地の周辺部から北へは五ケ瀬川,南ヘ一ツ瀬川や小丸川が,南西へ球磨川,北西へ緑川が流出している。山地の最西縁には高峰が連続し,熊本県との県境となっている。北から三方山(1,577.5m)―高岳(1,563.2m)―国見岳(1,738.8m)―五勇山(1,662.0m)―烏帽子岳(1,691.7m)と南へ続き,市房山・石堂山に達して米良(めら)山地に連続する。東の方ほど山地は一段と低くなるが,それでも標高1,500~1,600m級の山岳が重畳し,北東から南西方向に並走している。すなわち向坂山(1,684.4m)―白岩山(1,646.4m)―扇山(1,661.3m)などである。さらにその東側にほぼ同じ走向に標高1,200~1,300m級の清水岳(1,204.5m)―笹ノ峠(1,340.4m)―竜岩山(1,318.0m)―尾崎山(1,438.5m)―高塚山(1,289.9m)―江代山(1,606.7m)などを結んで尾根が続く。椎葉山地の地質は,仏像構造線が山地塊の中央部やや北側寄りを北東から南西方向に走っており,そこを中心に帯状に数条の古生代二畳系の秩父古生層に属する石灰岩が現れている。これより以北のほぼ半分は古生代のチャート,粘板岩,砂岩からなる地層が東北東ないし北東に走り,多くは北西へ急角度で傾斜し,背斜向斜などの激しい褶曲構造を示し,また衝上断層によって地層が逆転していることもある。そのため上記の地層が帯状に分布する。仏像線以南の南東半分は,北東から南西方向の一般走向をもち,大部分が北西に傾斜し,地層の走向にほぼ並行する多くの衝上断層に切られて,全体として顕著な帯状構造を示す中生界末から古第三系の四万十層群に属する砂岩,泥質岩からなる複雑な山地となっている。地勢は米良山地と同様,山頂部や山腹には緩斜面をもつが,河川はその下部を深くV字形に浸食谷をつくっており,谷底平野に欠ける。現在,主として谷底沿いに,諸処急な谷壁をカットして国道327号が通じているが,幅員が狭いうえ,大雨などで崖崩れをしばしば受ける交通不便な山岳地域となっている。したがって古くからの道路や集落は山頂部に近い緩斜面の部分や河川支流上流部の浅い谷部分にあり,分散孤立して発達してきた。近世には南の米良荘と同じく人吉藩の相良氏支配下に置かれ,険しい山地が外部との交渉を許さず,典型的な隔絶山村をなしてきた「ひえつき節」の故郷である椎葉村がこの山地にある。昭和35年,耳川の上流に,日本最初のアーチ式ダムが九州電力によって完成,吉川英治によって日向椎葉湖と命名された人造湖が村の中心地上椎葉のすぐ北西にある。上流部では,谷を昇り脊梁山地の鞍部越えで熊本県側と往来をもった椎矢峠や不土野峠などがあるが,今は往来が少なくなった。山地交通の中心は,上椎葉から東へ向かう椎葉街道(国道327号)であり,入郷地帯を通って日向市に達している。椎葉山地の西側県境一帯は,昭和57年九州中央山地国定公園に指定され,まだ舗装されていないが九州山地を縦断する国道265号が走っている。

![]() | KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7235122 |





