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不動産市場安定化ファンド(官民ファンド)
【ふどうさんしじょうあんていかふぁんど;かんみんふぁんど】


2008年のリーマンショックに端を発した金融混乱で、J-REIT投資法人は、キャッシュフローが安定しているにもかかわらず借入金の借り換え(リファイナンス)ができなくなって資金繰りが逼迫し、破綻または破綻の危機にさらされる銘柄が出てきた。
そこで、資金を必要とするJ-REITに安定した資金供給を行うために、2009年9月に不動産市場安定化ファンドが設立された。このファンドは、国土交通省など政府が設立を主導し、ファンドに対する資金は、業界関係各社が「エクイティ」を、民間金融機関各社がシニアローン(「シニアデット」)を、政策投資銀行がややリスクの高い「メザニン」ローンを出資あるいはコミットすることで、3000億円~5000億円をJ-REITに貸し付けられる枠を確保した。このように、J-REITを支えるために官民が協力してファンドを設立したことから、「官民ファンド」とも呼ばれる。
不動産市場安定化ファンドからの借り入れは、金利は高めで返済期限も短いため、実際にはそれほど活用されていない。日本賃貸住宅投資法人に合併する前のプロスペクト・リート投資法人が2010年3月に100億円を借り入れた実績や、ユナイテッド・アーバン投資法人に合併する前の日本コマーシャル投資法人が2010年4月に80億円を借り入れた実績がある。しかし、実際の活用の有無は問題ではなく、むしろ、このファンドがバックアップしていると認識されることで民間金融機関の疑心暗鬼が解消し、J-REITに対する資金供給が全般的に復活したことが、大きな功績である。同時期には、J-REIT同士の合併・再編を後押しする制度改正も行われ、これらが相まって投資口価格は復活し、危機に瀕していたJ-REITの運営は安定を取り戻すことに成功した。
このように、官民ファンドは、仕組みを整備するだけで実際に資金を多くは投入しなくても、金融マーケットへのアナウンス効果で信用収縮の悪循環を断ち切ることができるという、好事例となっている。将来においても応用が期待される。




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日経BP社
「プロフェッショナル用語辞典 不動産ビジネス」
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