100辞書・辞典一括検索

JLogos

28

慌てる・周章る
【あわてる】


awateru

【古代】1)むやみに急ぐ、うろたえる。2)突然のことで心がひどくゆれ動く。[中国語]着慌、張惶。be flustered, be confused, be in a panic.

【語源解説】
古形はアワツ{アワツ}。〈あわただし〉と同根語であるが、古語に〈狼狽 安和豆(アワツ)〉(新撰字鏡)とみえ、アワツの口語形が〈あわてる〉。泡(アワ)が立ったり消えたりすこしも間もないさまからの転用。アワ+立(タ)ツawatatu→アワツawatu→アワテルawateru。形容詞はアワタタシ(のち濁ってアワタダシイ)。アワテフタメクはアワテにフタメクの複合した語。

【用例文】
○狼狽mini{ 安(ア)和(ワ)豆(ツ)}/惶急、驚失意也。mini{於(オ)比(ビ)由(ユ)}、mini{阿(ア)和(ワ)豆(ツ)}(新撰字鏡)○幼き心地はそこはかとなくあわてたる心地して/乳母よりはじめてあわてまどふこと限りなし/いとうたて、あわたたしき風な{ン}めり御格子おろしてよ(源氏)○受(じゅ)禅(ぜん)〔帝位をゆずる〕ありしかば、天(てん)下(が)なにとなうあは((ママ))てたるさまなり/あまりにあはてさはひで黄水(わうづい)つく〔ヘドをはく〕物おほかりけり(平家)○御くるまのよりしに、あはてゝはきたりし物も(とはず)○周章(アハツ)(今昔)○遽mini{アハツ}(伊呂波字類抄)○蒔絵師あはてふためきて参りたりける(古今著聞集)○いかなる大事の出き候へば、それほどにあはてたまふぞや(曽我)○アハテヽ急速ニセウトモナイゾ(毛詩抄)○サカサマニクツヲハクゾアワツルホドニゾ(蒙求抄)○{りっしんしょう)(アワテ)、遽(アワテ)(早大節用集)○Auatc{c}uru. アワツル あまり急いで心の平静を失う、また、とりみだしている。モノヲアワテテスル=物事を大急ぎで、またとりみだしてする/アワテハタメク、アワテフタメク(日葡辞書)○周{りっしんしょう)(アハテ)mini{章ト同}(易節用集)○人皆あはてゆけば木履(ほくり)にて陰嚢(ヘノコ)をふまへたり(醒睡笑)○周章(アハテフタメク)、{めじょう)(アハテル)、遽(同)(書言字考)○周章(あわてる)/遽(あはたゞし)(早節用集)○{りっしんあて}ノ字をよめり、文選〔中国古典〕に周章をよみ、あわたゝしとも(倭訓栞)○{めじょう)(あはてる)mini{文選}、遽(あはてる)(いろは節用)○周章(アワテル)、慌{りっしんした}、蒼黄/遽色(アワテタヤウス)(魁本大字類苑)○なんだか今日(けふ)は日がみぢかい、ト急(いそ)ぎあわてて歸(かへ)りゆく(梅暦)○はしごをあわてゝかけおりるとたん(安愚楽鍋)○アハテル 周章。同義語 オドロク・ウロタエル・ビックリ/アワツル、アハテルと同じ(ヘボン)○周章(あはて)て手巾(ハンケチ)を面(かほ)に当てた/文三〔人名〕は狼狽(あわ)てゝ告別(わかれ)の挨拶を做(し)直(なお)して/倉皇(あはて)て箸(はし)を棄(す)て(二葉亭四迷)○慌(あは)て(芥川龍之介)
【補説】
仮字(かな)遣いが中世から、アハツ(テル)と過剰反応によるが〈あわてふためく、あわてさわぐ、あわて者、あわただしい〉など、アワツ(テル)が正式。〈急ぐ〉の意より〈うろたえる〉などの意のほうが主として用いられ、やがて、急ぐ意に限定されて用いるようになったと思われる。




東京書籍
「語源海」
JLogosID : 8537102