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有頂天
【うちょうてん】


uty^{o}ten

【近代】あまりの喜びに、他のことを忘れてしまうこと。無我夢中。〈非想{ひそう@非想}〉も同じ。[中国語]歓天喜地。exaltation.

【語源解説】
仏教関連語。仏教の世界観、宇宙観による語。〈有頂〉とも。〈有(ウ)〉の〈頂天〉の意。有とは梵語バーヴァbh={a}va、存在の意。頂天の天はすなわち、三界{さんかい@三界}、欲界・色界・無色界の天をさす。〈有頂天〉には二つの解釈があり、1)色界の十六(あるいは十八など)天の最高天(第四天)―{2}阿加尼{くちとん)(アカニタ)天(テン)Akanid{s}d{t}ha=色(しき)究(く)竟(ぎょう)天(てん)―{2}を有頂天という。形ある世界の最高に位置することになる。2)無色界の最高の天(第四処)―{2}非(ひ)想(そう)非(ひ)非(ひ)想(そう)処(しょ)天(てん)=非非想天=非想―{2}を有頂天という。これは有(ウ)を超越しているので、あらゆる点で最高のところとなる。いずれにせよ、この有頂天から、〈有頂天にのぼる〉省略して〈有頂天〉などの言い方がおこなわれ、得意の絶頂とか歓喜のきわまるところなどを意味する慣用句がでる。なお、江戸前期ころから、〈有頂天になる〉の言い方も用いた。〈有頂天〉の考えは古代、仏教とともに日本に伝えられたであろうが、譬喩的用法は江戸期、17世紀にはいってからであろう。なお、俚諺〈子ハ三界ノ首カセ〉の三界も先にあげた三界と同じ。

【用例文】
○此の娑婆世界は願ひ住むべき所にもあらず……有頂も輪(りん)廻(ね)期(ご)なし、况んや世の人をや(栄花)○有頂天輪廻無期(往生要集)○上は非想の雲の上(謡曲)○月を見る人の心や有頂天(毛吹草)○三味線を調べて一曲唄へば生ながら有頂天になりて(名所記)○誠におもしろし、あふとはや胸せき、有頂天にのぼりきって息仕(づかひ)のあらふなる(好色訓蒙図彙)○面目なしと戻りかね、心は有頂天王寺(近松)○女郎巧者の手(て)管(くだ)を以て諸(もろもろ)の客を有頂天へ上(のぼ)し(浮世草子)○有(う)頂(てう)天(てん)(早節用集)○今ぞ我身を有(う)頂(てう)天(てん)かくのごとくの丸(まる)裸(はだか)(平賀源内)○店に必線香あり。富(ふう)貴(き)有(う)頂(てう)天(てん)に在(あり)(洒落本)○有(う)頂(てう)天(てん)になつて夜(よ)鍋(なべ)仕(し)事(ごと)も手につくもんぢやァねへ。……毎晩年(とし)忘(わすれ)だ(浮世風呂)○有頂天へ魂は飛び上り(歌舞伎)○ウチャウテン 有頂天 有頂天ニナル。同義語 夢中、ウワノソラ(ヘボン)○いざ赤ん坊がうまれてしまうと……有頂天になり(北杜夫)




東京書籍
「語源海」
JLogosID : 8537190