猿股
【さるまた】

sarumata
【現代】パンツの一種。褌(ふんどし)に代わる男子の下着。異称、西洋ふんどし{せいようふんどし@西洋ふんどし}、猿(さる)股(もも)引(ひき)。[中国語]{はかま}叉。drawers.
【語源解説】
江戸時代の〈猿股(もも)引き{さるももひき@猿股(もも)引き}〉のモモに代わって股(また)と称したところから、猿(さる)股(また)引(ひ)き→猿(さる)股(また)となった。〈猿〉の呼称があるのは、江戸では猿廻し(猿引き)など、短い股(もも)引きを身につけていた点、また袖無し羽織などを〈猿ッ子・猿ノベベ(衣)〉などとよび、庶民レヴェルで〈猿〉を卑称として用いていた。そこで股引きの一種、膝ぐらいのものを〈猿股引き〉と俗称し、下着として用いた。〈股(もも)引(ひき)〉を詳述している『守貞謾稿』に、〈旅行半股引mini{京阪ニハ股引トノミ云、江戸ハ猿股引ト云}〉とあり、江戸での言い方で〈猿股引き〉が出てきた。山田美妙『日本大辞書』に、〈さるまた{猿股}さるももひきと同ジ語/さるももひき{猿股引き}殆ンド膝アタリダケデ、其下ニハ及バヌ短イ股引キ=サルマタ〉とある。〈股引き{ももひき@股引き}〉は本来は、武家が身につけた外装のもので、〈股はばき、股ぬき〉(宇治拾遺物語・吾妻鑑など)とよばれ、のち〈股(もも)引き〉とよばれた。下着となったのは幕末か。歌舞伎、「曽我梅菊念力弦(そがきょうだいおもいのはりゆみ)」に〈烏帽子をかむりしまま、猿股一つにて湯へ入らうとする〉など古い例であろう。
【補説】
幕末まで男性はフンドシ。西洋のパンツなどがはいり、下着としてサルマタが採択された。一般化は明治以降であろう。〈サルモモヒキ〉の呼称も昭和期まで用いられている。女子はズロース(股引きの意)。

![]() | 東京書籍 「語源海」 JLogosID : 8537597 |





