100辞書・辞典一括検索

JLogos

27

鯰・{さかなへん}
【なまず】


namazu

【古代】淡水魚。頭が平たく体のわりに大。ひげが二対あり、鱗なく体がぬるぬるしている。俗に地震予知するものといわれる。[中国語]鯰魚。catfish.

【語源解説】
ナメラカ、ナメクジ(蛞蝓)のナメと同じ、ツは面(ツラ)(表面)の意か。鱗なくヌルヌルとつかみにくい体からの命名。ナメツラ→ナマヅ。漢字は〈鯰、{さかない}、{さかなへん}、鮎〉などさまざま({さかなへん}は和製)。鯰(ネン)=鮎(ネン)は同じく粘(ネン)に通じて日本語のヌルヌルの意からあてる。また年魚の〈年(ネン)〉にも音の通じるところから用いる。

【用例文】
○{さかなみやこ}、鯰、{さかなぎょう}mini{奈万豆(ナマヅ)}/{さかない}、{さかなくら}mini{知々夫(チチブ)}(新撰字鏡)○鯰 mini{和名、奈(ナ)万(マ)豆(ヅ)}。{さかなへん}ノ字、所出未詳(和名抄)○鯰尾(中右記)○三尺ばかりなる鯰のけたけたとして庭にはひ出たり(宇治拾)○鮎(ナマヅ)、鯰 mini{二字ノ義同シ}(下学集)○Namazzu. ナマヅ ある川魚(日葡辞書)○鮎(ナマヅ)、さかなくさふるとりまた(同)(易節用集)○{さかない}魚 那未豆(ヅ) 異名、{さかなこれ}魚、鮎(ネン)魚(新刊多識編)○鯰(ナマヅ)(類聚往来)○二人して一つ釣けり江の鯰(芭蕉)○瓢{たけくちこういち}で鯰おさゆる(世話重宝記)○鯰 凡ソ鮎、{さかない}、{さかなかくしがまえひおんな}、{さかなこれ} 素(モト)倶ニ鯰ノ名ニシテ、本朝、鮎{さかない}ノ二字ヲ以テ仮テ細鱗ノ名ニ用ユ(本朝食鑑)○さかない(ナマズ)、鮎(同)、さかなこれ(同)、鯰(同)(書言字考)○鮎mini{なまづ}、{さかない}、{さかなこれ}、{さかなえん}、鯰mini{俗字}、{さかなへん}(和漢)○鮎ナマヅ、鯰、{さかない}、{さかなえん}(学語編)○ナマヅヲ瓢簟デオサヘル(諺苑)○{さかない}魚 mini{ナマズ}。享保十四年九月朔日、武州豬頭〔井の頭〕ノ池水汎濫……馬多死尓来多此魚〔{さかない}魚〕有リト云フ(本草)○鯰の外はゆるがせぬ君が御代(川柳)○なまづ 文徳実録に出づ、新撰(シンセン)字(ジ)鏡(キャウ)にちゝぶ、崔(サイ)氏(シ)食(ショク)経(キャウ)に鯰(ネン)の字を用ひ、漢語抄にはさかなへん(ヘン)の字を用ゆ(魚鑑)○Namazu. ナマヅ 鯰魚 cat-fish,silurus japonicus.(ヘボン)
【補説】
明治時代以前では必ずしも、〈鯰(ナマヅ)〉の1字のみではない。和製の〈{さかなへん}〉のほか、〈鮎〉など中国の用字も用い、7字種はみる。日・中での同定はきわめてむずかしい。〈ちゝぶ〉は別称か。また、〈鯰(なまづ)髭(ひげ)〉は明治初期に官吏を嘲笑した語、彼らが鯰のひげのような口ひげをはやしていたからである。なお皮膚病の一種に瘢風(なまず)〈癜〉がある。鯰の肌に似ているところからの俗称。なお多くの漢和辞典が〈鯰〉を国字とするのは誤り。




東京書籍
「語源海」
JLogosID : 8537904