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軍師たちの本当の仕事とは?


軍師たちの本当の仕事とは?

◎軍師は本当は易者?

 戦国時代の軍師といえば、近年は小説やテレビドラマのヒーローとして扱われ、戦国武将より人気が高かったりする。ここでは、そんな軍師の役割について真相を語りたい。

 軍師の職務を、合戦時における作戦参謀や大将の補佐役と考えるのは、必ずしも正確ではない。もちろん、そうした仕事もあるが、そもそも軍師は易者として戦国大名に雇われた男たちなのである。

 戦国大名にとってもっとも重要なことは、敵との戦いに勝つことである。彼らは勝利のためにはあらゆる注意を払った。ジンクスやタブーなども深く信じ、戦争に際しての日取りや方位、運気などは最良のものを選択するよう常に心掛けた。

 ただし、数え切れないほどの俗信すべてを暗記することは不可能だ。それゆえ、専門の知識を有する人間を雇う必要が出てきた。すなわち、それが軍師なのである。だから軍師には、俗信や易学に通じた禅僧や陰陽師[おんみょうじ]、修験者出身の者が非常に多かった。

◎儀式の進行や士気の鼓舞が主な仕事

 さて、軍師の仕事だが、その中心は諸儀式の主宰で、出陣式や凱旋[がいせん]式を執行し、首実検を統べた。ご存じのように首実検とは、取った首を大将に披露してゆくものだが、首の見栄えをよくするための化粧方法、首札の記入法、首台の寸法や材質など、実に細かいルールがあった。大将への首の披露の仕方も、

 「両手で首を取り上げ、切り口に指をかけ、左右の耳に親指を差し入れて顔を真っすぐに直し、それを右脇に抱えて主君の前に進み、首を差し出して右面を御目にかけ、今度は左脇に抱え直して静かに退場する」

 といった具合に面倒で、首実検は終始、軍師のしきりのもとに進行したのである。

 軍師は確かに兵法に通じている人物が多かったが、戦術に関しては大将にアドバイスする程度で、あくまでその遂行権は大将にあった。むしろ大将が軍師に期待したのは、味方の士気を鼓舞することだった。そのために軍師は雲や風、鳥や敵の挙動を占い、兵を勇気づけたのである。ここに軍師の合戦における真骨頂があったわけだ。

 このように、史実の軍師の職務は通常イメージする軍師とは、かなりかけ離れているのである。




日本実業出版社
「早わかり日本史」
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