カウンセリング

カウンセリングで何が大事か,何が原則かという問題についてはいろいろなレベルで答えがある.ロジャーズはカウンセラーに大切な態度として,①自己一致,②共感,③積極的関心,④無条件の関心の4つをあげている.ここではカウンセラーの成長の度合いに応じてみていこう.
①もっとも低級の答えは,「自分の考えを押しつけず,クライエントの話を傾聴する」といったものである.カウンセラーの「自分」を消去することが求められる.しかしただ単に傾聴と受容になってしまう場合もある.
②受容だけでは務まるはずもないので,ときに対決・説得・助言の場面も必要になる.「自分を出す」ことになる.しかしこれと「自分の考えを押しつける」こととの違いを明確に意識していなければならない.これはむずかしいが,結局高いレベルの常識があるかどうかということになるだろう.しかしそのような世間の常識というものは,世間で世間並みに仕事をしているからこそ得られるのであって,診察室で話を聞いているだけでは十分に身につかないものかも知れない.カウンセラーはたとえばサラリーマン以上に世の中や人間について知っているかといえば,疑わしい.逆にカウンセラーは何も知らないが安定はしている,それだけでも価値があるのかも知れない.
③さらに高級になると,再びカウンセラーの「自分」というものが消える.
④さらに高次になると人間の深い部分での交流になる.これは実際の社会生活の中でもまれにしか存在しない.

![]() | 丸善 「こころの辞典」 JLogosID : 12020056 |