治療者は患者の何を受け入れ,何と連帯するのか?

患者の精神機能は全面的に病的なわけではない.部分的に病的であったり,一時的に病的であったりする.したがってたいていの場合,健康な自我機能は残されていて,治療者が,患者の健康な自我機能と連帯するチャンスは常にある.
病的部分と健康部分とを分けて考えると,健康部分の悩みを受け入れ,健康部分と連帯すればよい.病的部分と健康部分の区別がはっきりしなくなることが精神病の特徴であるが,区別がはっきりしなくなったとき,区別を再びつけられるよう援助するのが治療者の役割である.病的部分があっても,それを病的と認識できていれば,「病識がある」という.そのとき病的部分と健康部分の区別をする認知機能は,病気におかされていないことになる.

![]() | 丸善 「こころの辞典」 JLogosID : 12020325 |