脳炎
encephalitis
脳の感染性炎症つまり脳炎では,脳器質疾患の原則通り,典型的には急性期に意識障害が,慢性期(後遺症)では痴呆や人格水準低下がみられる.蚊により媒介されるアルボウイルスが引き起こす日本脳炎encephalitis japonicaは後遺症としててんかんや知能遅滞,人格変化を残す.エコノモ脳炎(嗜眠性脳炎)は日本ではほとんどみられないが,脳炎後パーキンソン症候群で筋強剛が特徴的である.亜急性硬化性全脳脳炎subacute sclerosing panencephalitis(SSPE)は麻疹ウイルスの感染によるもので,脳波での周期性同期性発射periodic synchronous discharge(PSD)が有名である.単純ヘルペス脳炎は,免疫不全者に見られることがあり側頭葉症状(高度の記憶障害やKl(u)ver-Bucy症候群)が特徴でAcyclovirを投与する.予防接種後の脳炎は神経アレルギーによると考えられている.40~50歳で発病するクロイツフェルト-ヤコブ病Creutzfeldt-Jakob diseaseは亜急性海綿状脳症を呈し,プリオンによるものとされる.AIDS痴呆症候群AIDS dementia complexはHIV(human immunodeficiency virus:ヒト免疫不全ウイルス)による亜急性脳炎であり,高度の痴呆に至る.HIV感染では免疫不全からヘルペス脳炎などの日和見感染が起こる場合もある.
| 丸善 「こころの辞典」 JLogosID : 12020524 |