分裂病
分裂病は本質がわかっていないので,本質的な定義はできない.ただ,医者が「分裂病」の診断名を使うとき何を意味しているかは業界の習慣として説明できるはずである.ところがそれも国によって,流派によって違いがある.もっとも広義の分裂病から,もっとも狭義の分裂病までを並べて,その考え方を検討してみると,例えば以下のようになる.①性格傾向を判断材料とする.分裂病ではうつ症状も神経症症状も出る.②現実検討の喪失を基準とする.これは病態水準を見ていることになる.③現在症とくに陰性症状または自我障害を基準とする.④経過の特性を重くみる.シュープを反復する経過.しかしこれでは何十年も経ってからでないと診断できないことになる.臨床的には決定的に不都合であるが,これがもっとも病理の本質と関係しているかも知れない.以上のように性格傾向,病態水準,現在症状,経過と並べると次第に厳格になってゆく様子がわかる.もう少し具体的に示すと,広い順に,a.分裂気質+症状(ほとんどあらゆる症状),b.遺伝負因+症状,c.ブロイラー:4A(陰性症状の強調),d.シュナイダー:一級症状・二級症状(自我障害中心),e.クレペリン:経過分類・シュープ(段階的増悪),などがあげられる.DSMはブロイラーとシュナイダーの混合である.
| 丸善 「こころの辞典」 JLogosID : 12021223 |