忘れられる権利
【わすれられるけんり】
インターネット上に残る、自己に不都合な個人情報を検索できないよう求める権利。「拡大」や「炎上」によって侵害されたプライバシー救済のため、ヤフーやグーグルなどの検索エンジンから、ネット上の個人情報を削除してもらうよう検索事業者に要請できるとする権利。
2009年にフランスで初めて使われた概念で、欧州連合((EU)の最高裁判所に当たる欧州司法裁判所がこの権利を認めたことから、ヨーロッパ発祥の概念とされる。
これに対して米国では「真実をネット上に公表することにストップをかけるのは表現の自由に反する」との主張が強く、「忘れられる権利」の是非については見解が別れている。
日本では、グーグルに対し、自分の逮捕歴に関する報道内容が表示されないよう記事の削除を男性が求めた裁判で、最高裁は2017年1月31日付の決定で、検索結果を表示する表現の自由と比べて「プライバシーの保護が明らかに優越する場合に限って削除できる」として、削除には厳格な条件を満たす必要があるとする判断基準を初めて示した。
最高裁はこの決定の中で、検索結果で表示される情報の収集や整理は自動的に行われるが、そのプログラムは検索事業者の方針で作られるため、「表現行為の側面がある」として事業者に表現の自由の利益を認めたが、2014年にEUが認めた「忘れられる権利」には触れなかった。
個人のプライバシーを含む記事などの検索結果を削除できるかどうかの基準については
(1)事実の性質や内容
(2)事実が伝達される範囲と具体的被害の程度
(3)その人の社会的地位や影響力
(4)記事の目的や意義
などとして、事実を公表されないことによるプライバシー保護の利益が「事業者の表現の自由を明らかに上回る場合には、削除できる」との判断を示した。(Ando,2017/1)
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