時事用語のABC 医療・健康 先端医療 363 舌下免疫療法【ぜっかめんえきりょうほう】 花粉症などアレルギー疾患の免疫療法の1つ。症状が出た時に症状を抑える対症療法と異なり、アレルギーの原因物質であるアレルゲンを少しずつ体内に取り入れて体質を改善して免疫を作ることによって根本治療を目指す最新の治療法。薬剤投与は注射ではなく、微量のアレルゲンが入ったエキス薬剤を舌の下に垂らして口の中にふくんだ後に飲み込んで体内に取り入れる(エキス薬剤が液体の場合、パンに染み込ませるなどして舌の下に含んだ後に飲み込む方法もある)。このため「舌下」と呼ばれる。世界保健機関(WHO)の見解書に「アレルギー疾患を根治できる可能性のある治療法」と記述されたこともあって注目されている。 スギ花粉の場合、国内では鳥居薬品の「シダトレン」が、12歳以上の患者に限定して保険適応になっている。注射ではなく自分で服用できるので頻繁に通院する必要がないのも大きなメリットと言える。しかし継続が重要で、服用を一旦中止してしまうと最初からやり直しになるため、定期的に確実に通院しなければならない。服用は毎日1回、エキス剤を舌下に垂らし、2~3年(またはそれ以上)かけて徐々に体を慣らしていく。 受診の注意点としては、スギ花粉をアレルゲンとする花粉症を対象疾患としているため、血液検査によるスギ花粉の抗体が陽性だというデータが必要。事前にアレルギー検査を受けておくか、初診時には血液検査から開始する必要がある。血液検査は結果が出るまで通常数日から1週間程かかる。 治療開始の注意点としては、花粉が飛散している時期はアレルゲンに対する体の反応が過敏になっているため、スギ花粉が飛散している時期を避けて治療を開始すること。投薬開始時にはアナフィラキシーショックの可能性もあり得るため初回は特に慎重に様子をみる必要があること。また併用薬の制限があることなどがあげられる。例えば免疫に影響があるステロイド系の薬との併用や、ダニをアレルゲンとするアレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法を同時に行うことはできない(このアレルギー性鼻炎はヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニをアレルゲンとするもので、海外からの輸入錠剤が使われる)。効果を感じられる確率は高く、完治を含む7~8割の患者で何らかの効果が実感されているという報告もあるが、全く効果が無い場合もあるので過度な期待は禁物だ。 時事用語のABC「時事用語のABC」JLogosID : 14425664