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Winny事件


 ネット上でパソコン同士を結ぶP2P(Peer to Peer)技術を利用したファイル交換ソフトの一種である「Winny(ウィニー)」が、当初の著作権侵害に関係する違法なファイル交換の問題から、ウイルス感染などを伴った自衛隊や警察など各種の機密情報流出事件へと発展し、大きな社会的波紋を呼んでいる。
2004年5月、Winnyソフト開発者が、映画や音楽、ゲームなどの違法なファイル交換を助長していたとして著作権侵害幇助(ほうじょ)容疑に問われ逮捕されたことは大きな社会的な反響を呼んだが、当時はまだ「サービス提供者側の問題」ととられていた。
しかし、ファイル交換ソフトには、特定のデータ送信可能化状態に置かれるために、利用者間で「意図せざる」著作権侵害(送信可能化権侵害)行為を重ねるリスクが潜んでいる。例えば利用者パソコン内に保管されている交換を予定していない機密データが、ウイルス感染によって、第三者対して取り消し不能な形で送信されてしまう危険性がある。
今般の機密情報流出事件では、いかに多くの人々が、その優れた匿名性に隠れてWinnyを利用していたかが広く知られる結果となった。頻発する情報流出事件は、匿名性呼び水となって集まった数十万人ともいわれる潜在的利用者通じて起こるべくして起きたもので、ネット社会、情報社会の怖さと脆さを象徴する事件といえる。
流出が発覚した情報は、自衛隊や警察、学校、病院、金融機関などに属する、容易に入手できない最高度の機密情報にまで及んでいる。機密情報流出事例は、Winnyの他にShareなどのファイル交換ソフトでも発生しており、利用者著作権侵害行為のみならず、自分自身の機密情報管理にも注意を払うべきである。




朝日新聞社
「知恵蔵2009」
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