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日本国憲法の正統性


 法律の正統性の根拠は、国会が法律を制定すると定める憲法の規定(41条など)に求められる。そこで憲法の正統性を問われることになるが、その一応の答えは、主権者たる国民が憲法を制定した、ということに存する。このような論理的正統性とは別に、日本国憲法関しては、以下の諸点に留意しつつも、制定過程からみた正統性も語りうる。第1に、日本国憲法明治憲法の改正手続き通じて制定された、ということが問題になる。というのも、天皇主権国民主権変えることは、明治憲法の改正の限界を超えるものであって無効である、という理屈がありうるからである。そこで、8月革命説と呼ばれるものが学界で広く受け入れられるようになった。それによると、1945年8月のポツダム宣言の受諾によって、国民主権体制への移行などを内容とする法的革命が起こったのであり、日本国憲法の制定は、それを受けて行われた、とされる。第2に、日本国憲法国民主権にふさわしい民主的手続きの下で制定されたといえるか、第3に、その制定は占領下でなされたものとして問題がある、という指摘もある。なお、以上とは別に、憲法が日本で実効的に存在している、ということを事実として受け入れれば十分であって、憲法の正統性など問う必要はない、という考え方もある。




朝日新聞社
「知恵蔵2009」
JLogosID : 14847675