乳がん

breast cancer
日本人女性の乳がん死亡率は、胃、肺、大腸がんに次いで第4位だが、患者数(罹患率)は胃がんとほぼ同様。欧米に比べると少ないが、ハワイに移民した日本人に増えていることから、欧米風の生活習慣が関係しているものと考えられる。国内では主として閉経後の女性に増えている。乳がんは自己診断で発見されることが多く、視触診に加えて、乳腺の乳房X線撮影(マンモグラフィー)で診断される。乳がんのがん抑制遺伝子として、BRCA‐1とBRCA‐2が分離されている。前者は卵巣がん、後者は男性の乳がんにも関与している。遺伝性乳がんの発症前の遺伝子診断にこれらの遺伝子が使われているが、陽性でも必ずがんになるわけではない。乳がんは治しやすいがんの1つで、5年生存率は83%に達する。早期には外科的摘出が基本だが、手術によって乳房を失うという心理的負担は女性にとって大きい。このため、できるだけ拡大手術を避け、必要最低限に手術するようになってきた。がん細胞が女性ホルモン(エストロゲン)に対する受容体を持ち、反応する可能性がある場合にはホルモン療法を行う。HER‐2というがん遺伝子を発現している場合には、抗体療法が有効。

![]() | 朝日新聞社 「知恵蔵2009」 JLogosID : 14848742 |