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埋蔵金
【マイゾウキン】


 いわゆる「霞が関埋蔵金」のこと。国の特別会計の資産から負債を除いた剰余金や積立金などのうち、政策の財源として活用できる部分として、2007年頃から注目され出した。企業おける内部留保金に該当する。その規模は50兆円とも言われる。国家予算の一般会計と特別会計のうち、一般会計は、08(平成20)年度の歳出が約83兆円なのに対し税収は約54兆円で、差額の内の約25兆円は赤字国債に依存しており、累積した国債残高は550兆円を超える。一方、各省ごとの特定事業を管理する特別会計は、08年度の歳出純計額が178兆円で収支はバランスがとれているものの、資産から負債を除いた積立金などの総額は187兆円の資産超過になっている。内訳は、「年金特別会計」が131兆円、「外国為替資金特別会計」が19兆円、「労働保険特別会計」が14兆円、「国債整理基金特別会計」と「財政投融資特別会計」が各10兆円などである。特別会計の資産が注目されたのは、03年の国会で、当時の塩川正十郎財務大臣が「母屋(一般会計)でおかゆをすすっているときに、離れ(特別会計)ですき焼きを食べている」と発言してからである。その後、05年4月の経済財政諮問会議において、当時財務省の高橋洋一が省庁別財務諸表をキャッシュフロー分析し、当時31あった各特別会計の「見えない資産」の金額を初めて明らかにした。これに対し、07年秋に、財政再建を主張する自民党の財政改革研究会(与謝野馨会長)が「特別会計の積立金などには目的や理由が存在する。財源が捻出できるなどというのは、いわゆる『霞が関埋蔵金伝説』の類の域を出ない」と批判したが、「埋蔵金」というネーミングの巧みさがかえってその存在をクローズアップさせ、「埋蔵金を発掘した」高橋洋一は「霞が関埋蔵金男」として一躍時の人となった。08年10月末現在、特別会計は11年度末までに17に減らすこと、準備金は総資産の5%までと決められており、それを超える分は国債の利払いなどに充てなければならなくなっている。不況が深刻化して税収が落ち込む中で、財源問題の解決のために特別会計の剰余金を活用すること自体には与野党とも反対はしていない。それを「埋蔵金」と呼ぶかどうかの違いがあるだけである。
(高橋誠 ライター 2008)




朝日新聞社
「知恵蔵2009」
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