早く
【はやく】

[副]
((形容詞「はやし」の連用形から))[1]以前。昔。ずっと前。
[例]「◎はやく住みける所にて、郭公(ほととぎす)の鳴きけるを聞きて、よめる」〈古今・夏・一六三・詞書〉
[訳]「◎以前暮らしていた所で、ほととぎすが鳴いたのを耳にして、詠んだ(歌)」
[2]すでに。とっくに。もはや。
[例]「花見にまかれりけるに、はやく散り過ぎにければ」〈徒然・一三七〉
[訳]「花見に参りましたところ、もはや完全に散ってしまっていたので」
[3]〔多く、文末に助動詞「けり」を伴って〕実は。驚いたことに。なんと。
[例]「針をひき抜きつれば、はやくしりを結ばざりけり」〈枕草子・ねたきもの〉
[訳]「(急ぎの縫い物をしていて、うまくできたと思って)針を引き抜いたところ、なんと(糸の)端を結んでいなかった」
[4]もともと。元来。
[例]「はやく跡なき事にはあらざめりとて」〈徒然・五〇〉
[訳]「(鬼がいるとのうわさは)もともと事実無根のことではないようだと思って」

![]() | 東京書籍 「全訳古語辞典」 JLogosID : 5071943 |