一一
【いち-いち】

<一>[名]<二>[副]
<一>
[1]ひとつひとつ。
[例]「『はべしやうしかじか』と、いちいちに申させ給へば」〈栄花・わかばえ〉
[訳]「『(そこで)ありましたことはこれこれ(でした)』と、ひとつひとつ申し上げなさると」
[2]ひとりひとり。めいめい。
[例]「刀自(とじ)、すましなど、いちいちに言ひ渡す」〈栄花・わかばえ〉
[訳]「刀自(=調理の下働きをする女官)、すまし(=洗濯や掃除をする女官)など、ひとりひとりに言い渡す」
<二>〔多く、下に助詞「に」を伴って〕ひとつ残らず。どれもこれも。
[例]「なんぢが申す所、いちいちに聞き開きぬ」〈曾我・一〇〉
[訳]「そなたが言うところは、ひとつ残らず聞いて了解した」

![]() | 東京書籍 「全訳古語辞典」 JLogosID : 5074145 |