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申させ給ふ
【まうさ-せ-たま・ふ】


まうさ-せ-たま・ふ【申させ給ふ】(モウサセタマ(モ)ウ)
((謙譲の動詞または補助動詞「まうす」の未然形+使役・尊敬の助動詞「す」の連用形+尊敬の補助動詞「たまふ」))<一>〔「まうす」が動詞の場合〕[1]〔「せ」が使役の場合〕申し上げさせなさる。
[例]「『うちやすみたる』と人々してまうさせたまへば」〈源氏・柏木〉
[訳]「『寝ている』と(柏木(かしわぎ)は)女房たちを通じて(父の大臣に)申し上げさせなさるので」


[2]〔「せ」が尊敬の場合〕申し上げなされる。
[例]「殿(との)聞かせ給ひて、『いとあしきこと。はやのぼらせ給へ』とまうさせたまふに」〈枕草子・淑景舎、東宮にまゐり給ふほど〉
[訳]「関白殿(=藤原道隆(みちたか))がお聞きになって、『とてもいけないことです。はやく参内(さんだい)なさいませ』と(中宮に)申し上げなされるところに」
[3]〔「す」が謙譲の意を強める場合〕申し上げなさる。
[例]「『かれ、見たてまつらせ給へ。いまは明けぬるに、かうおほとのごもるべきかは』とまうさせたまへば」〈枕草子・大納言殿まゐり給ひて〉
[訳]「『あれ、ご覧申し上げなさいませ。もう夜が明けたのに、こうお休みになってよいものですか』と、(大納言が中宮に)申し上げなさると」
<参考>[3]の用法は[1][2]と区別がつきにくく、確実な例は多くない。
<二>〔「まうす」が補助動詞の場合。「せ」は尊敬の場合が多い〕…申し上げなされる。
[例]「殿はまづ御堂(みだう)御堂あけつつ、待ちまうさせたまふ」〈大鏡・道長・上〉
[訳]「殿(=藤原道長)は初めに各御堂(の扉)をあけて、(宮様方を)待ち申し上げなされる




東京書籍
「全訳古語辞典」
JLogosID : 5078823