面影に 花の姿を 先立てて 幾重(いくへ)越え来(き)ぬ 峰の白雲
【おもかげに】

〔〔和歌〕〕〈新勅撰・春上・五七・藤原俊成(しゅんぜい)〉
[訳]「想像の中で桜の咲いているようすを思い描きながら、(桜と見間違えて)峰の白雲をいったい何度越えてきたことか」
<参考>「遠尋山花」題で詠まれた歌。白雲を桜と見誤り、何度も失望しながらも花を探し続ける心をうたう。秀歌として世間で評判になったが、『無名抄』五八の「俊成自讃歌の事」によれば作者自身は「◎夕されば野辺の秋風身にしみて鶉(うずら)鳴くなり深草の里」に比べて劣ると考えていた。→ゆふさればのべのあきかぜ…〔〔和歌〕〕

![]() | 東京書籍 「全訳古語辞典」 JLogosID : 5082744 |