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好き好きし
【すき-ずき・し】


[形][シク](しく)・しから/しく・しかり/し/しき・しかる/しけれ/しかれ

名詞「好き」を重ねて形容詞化した語。基本的に対象に対して深く執着する状態を表す。対象が異性の場合は、色好みだの意となり、対象が異性以外の場合は、風流だ・風雅だの意となる。またその状態を否定的にとらえた場合は、浮気だ・物好きだ・酔狂だの意となる。


[1]色好みだ。浮気だ。異性に関心が深い。
[例]「さらにかやうのすきずきしきわざ、夢にせぬものを、わが家におはしましたりとて、むげに心にまかするなめり、と思ふもいとをかし」〈枕草子・大進生昌が家に〉
[訳]「まったくこのような色好みなことは、夢にしない人(=平生昌(なりまさ))なのに、わが家に(中宮さまが)いらっしゃったということから、むやみに思いどおりにしているのだろう、と考えると非常におかしい」
[2]風流だ。風雅だ。物好きだ。酔狂だ。
[例]「月ごろいつしかと思ほえたりしだに、わが心ながらすきずきしとおぼえしに」〈枕草子・故殿の御服のころ〉
[訳]「何か月もの間(三月に七夕(たなばた)のころの詩を引用した藤原斉信(ただのぶ)をとがめるために七夕が)早く来てほしいと思われたことでさえ、自分でも物好きだと思われたが」
[例]「御誦経(みずきゃう)などあまたせさせ給ひて、そなたに向きてなん念じ暮らし給ひける。すきずきしうあはれなることなり」〈枕草子・清涼殿の丑寅のすみの〉
[訳]「(女御(にょうご)の『古今和歌集』暗唱成功祈願のための)ご誦経をたくさんさせなさって、そちら(=内裏(だいり))の方に向かって、(父大臣は)一日中祈りなさった。風雅で感動することである」
<参考>[2]の二つめの用例中の「すきずきしう」は連用形「すきずきしく」のウ音便。




東京書籍
「全訳古語辞典」
JLogosID : 5086406