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わくらばに 問ふ人あらば 須磨(すま)の浦に 藻塩(もしほ)垂れつつ わぶとこたへよ
【わくらばに】


〔〔和歌〕〕〈古今・雑下・九六二・在原行平(ありはらのゆきひら)〉
[訳]「たまたま(私のことを)尋ねる人がいたならば、須磨の浦(→すま)に藻塩を垂らし、涙を流しながら、つらい思いをしていると答えてくれよ」
<参考>「わくらばに」は偶然にの意。「藻塩垂る」は、塩を採るために海藻に海水をかけることで、涙を流す意の「しほたる」がかかる。「藻塩垂る」は「須磨」の縁語。文徳(もんとく)帝のとき、事件に連座して須磨に蟄居(ちっきょ)していた折に、都の人に贈った歌。作者の境遇は、『源氏物語』須磨の巻の光源氏のモデルとされた。また、作者と現地の女性の松風と村雨の姉妹との恋は謡曲『松風』に伝えられる。




東京書籍
「全訳古語辞典」
JLogosID : 5090074