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由良(ゆら)の門(と)を 渡る舟人(ふなびと) かぢを絶え ゆくへも知らぬ 恋の道かも
【ゆらのとを】


〈新古今・恋一・一〇七一・曾禰好忠(そねのよしただ)〉
[訳]「由良の海峡を渡る船頭が、楫(かじ)をなくして、行く先も分からず漂っているように、これ以後どうなっていくか分からない私の恋の道だよ」
<参考>上の句は「ゆくへも知らぬ」を導く比喩的序詞。『百人一首』では第五句が「恋の道かな」となっている。漕(こ)ぐ手段を失って漂流する船に、今後どうなるか分からない恋愛をなぞらえたもの。「由良の門」は、好忠の任地の丹後(たんご)の国説(=京都府宮津市由良)と、歌枕として定着していた紀伊(きい)の国説(=和歌山県日高郡由良町)との両説があり、定家の理解は後者とされる。「門」は両側の狭まった地形で、河口や海峡を指す。「楫」は船を漕ぐ道具である櫓(ろ)や櫂(かい)のことだが、二句の「かぢを」を「楫緒(かぢを)」(=楫を取りつける縄)の意とする説がある。




東京書籍
「全訳古語辞典」
JLogosID : 5091645